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私の市大20周年(8)情報科学部教授 北上始


私の市大20周年

【私の所属する研究室について】
私は、(財団法人)新世代コンピュータ技術開発機構や(文部省)国立遺伝学研究所などに勤めていましたが、1994年度の本学開学と同時に情報科学部の教授として着任し、20年間、教育や研究活動に従事しています。私が所属するデータ工学研究室(学部改編前にあたる1994~2007年度のあいだはデータベースシステム講座)では、2013年度までに、143名の学部卒業生、30名の大学院生(博士後期課程を含む)、4名の研究生を輩出しています。海外留学生(研究生を含む)については、現在までに、中国4名、ベトナム2名、ボリビア1名を受け入れましたが、今後、多くの留学生を受け入れたいと考えています。なお、現在のデータ工学研究室には、20名の学生(卒研生9名、修士1年生6名、修士2年生4名の他に、博士課程1名)が在籍しています。 研究室における教員の異動については、本学の開学から助教授を務めていた有川正俊 先生が1999年4月に本学から東京大学・空間情報科学研究センターへ助教授(現在、教授)として移籍し、同年9月に九州大学から黒木 進 先生が助教授(現在、准教授)として本学に着任しています。また、1996年から助手を務めていた佐藤 聡 先生が2001年4月に本学から筑波大学・学術情報メディアセンターへ講師(現在、准教授)として移籍し、2002年4月に九州大学から田村慶一 先生が助手(現在、准教授)として本学に着任しています。
さて、最近、米国Twitter社が過去8年分の公開ツイートのすべて(133テラバイト;1,700億件)を米国議会図書館に寄付したとのニュースがありました。寄付目的は、データを解析し、学術研究に利用することにあるそうですが、このようなデータは、既存の商用システムで取り扱うことができないぐらい巨大で複雑なため、ビッグデータと呼ばれています。データ工学研究室では、社会学や生命科学などの科学分野で発生するビッグデータに注目しています。研究室では、それらのビッグデータを解析するために有用なビッグデータマイニング手法の研究を行っています。ビッグデータマイニング手法を用いれば、データ解析結果を情報社会に反映することが可能となり、スマートで豊かな情報社会が構築されるのではないかと期待されています。社会科学の分野で重要なソーシャルメディアに関係するビッグデータマイニング手法の研究は2006年ごろから開始しています。生命科学の分野で注目されているゲノム情報に関するデータベースの研究は、1991年ごろから実施していましたが、ゲノム情報を対象にしたビッグデータマイニングの研究は、2000年ごろから本格的に開始しております。
これらの研究成果の一部は、筆頭著者となっている2冊の書籍(コロナ社)をご覧ください。書籍のタイトルは、2013年10月出版の「データベースと知識発見」および2014年10月出版予定の「ビッグデータ時代のゲノミクス情報処理」です。この他に、2013年10月に編者として「一般教育の情報」(あいり出版)、2011年12月に共著者として「情報とネットワーク社会」(オーム社)などを出版しています。興味のある方は、是非、一度ご覧下さい。また、データ工学研究室では、毎年、「フロントランナーの集い」と題する研究室ニュースを発行(今年で6年目)しています。このニュースを読むと、データ工学研究室の活動を垣間見ることができます。現在、研究室の関係者を中心に配布していますが、読んでみたいと思う方は、連絡をください。

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【広島で開催した研究集会について】
第一期生には、大学生活に有益なアドバイスをする先輩が身近にいないこともあり、卒業研究生や大学院生が「学術的な研究が研究室内の狭い世界の中だけで行われるものである」と捉えてしまうことは避けたいと思っていました。このため、卒業研究生や大学院生が国内外で活躍する研究者と深いかかわりを持つことは大変有意義であると考え、広島市立大学や広島市内に研究集会の誘致を行い、学生や院生が研究集会に参加する機会を増やしました。
(1)人工知能学会の研究集会
私が本学で最初に手掛けた研究集会は、人工知能学会の研究集会(第29回人工知能基礎論研究会)であり、1997年6月に本学講堂小ホールで開催しました。この研究集会は、2日間の日程で開催されました。初日の研究集会終了後、広島市中区の飲食店で懇親会を実施しました。当時は、広島高速4号線(1997年9月着工,2001年10月開通)の開通までに4年を待たねばならなかったため、本学から車に乗って懇親会場の近くの駐車場に移動するのに、30分以上かかりました。懇親会終了後は、車を有料駐車場に駐車したまま、タクシーで帰りました。翌日の朝早く駐車場に車を取りに行ったのですが、駐車場の管理人が営業開始時刻を過ぎても出勤してこなかったため、困り果てた記憶があります。二日目の研究会開始時刻に間に合うようギリギリまで駐車場の管理人を待ったのですが、結局、管理人が姿を現さなかったので、慌ててタクシーに乗り、中区の駐車場から本学の会場へ向かいました。朝から冷や汗をかいてしまいましたが、研究会開始には、なんとか間に合いました。後になってからですが、タクシー代を駐車場の管理人から清算してもらえることがわかり、ホッとした記憶があります。初めて開催した研究集会では、想定外のトラブルでしたが、2日間の研究会を無事に終了することができました。ご協力頂いた森 康真 先生や佐藤 聡 先生を初め、学生の皆さんに感謝する次第です。
(2)電気・情報関連中国支部連合大会
印象に残る研究集会については、当時、情報科学部の学部長であった磯道先生が実行委員長となり、1999年10月に開催した電気・情報関連中国支部第50回連合大会(参加者805名、論文発表451件)があります。当時、私は、実行副委員長を担当しました。また、幹事になって頂いた情報科学部の先生方から多大な協力を頂きました。この第50回連合大会を機会に、約10年に1度は本学で開催されるようになり、この意味でも中国地域の仲間入りができました。2009年10月に本学で開催された第60回連合大会(実行委員長:生岩先生、実行副委員長:弘中先生)では、参加者が782名、論文発表が472件となりました。私は、前回の引き継ぎを兼ねてアドバイザを務めました。本学からの発表件数については、第50回連合大会では68件でしたが、第60回連合大会では95件になり、増加する傾向にあります。将来が楽しみです。
(3)電子情報通信学会のワークショップ
広島市内で開催した比較的大きな研究集会(参加者428名,論文発表259件)としては、電子情報通信学会の第19回・データ工学ワークショプ(DEWS2007)があります。この研究集会は、3日間の日程で、2007年2月28日~3月2日に開催されました。この研究集会のローカルアレンジメントおよび財務を担当しましたが、それらの担当を引き受けたとき、この研究集会の会場を本学でなんとか開催できないかと考えていました。しかし、この研究集会は深夜遅くまで、若手の研究者どうしにより熱心な研究討論がおこなわれるという特徴がありましたので、会場をイベントが開催できそうな市内ホテルの中から選定することにしました。このため、2日間の日程で、会場の候補となりそうなホテルをいくつか訪問し、情報を収集しました。この情報をもとに、 DEWS2007の組織委員会で、駅からの位置・会場費用・部屋の種類などを総合的に検討した結果、広島市内の元宇品にある広島プリンスホテル(現在の名称はグランドプリンスホテル広島)が研究集会の会場として選定されました。当時のホテルには、光回線のインターネットが敷設されておらず、ホテルの担当者やNTT西日本の担当者らと一緒に、敷設のための打ち合わせもしました。広島市内のインターネット普及に、少しは、貢献したのではないかと考えています。
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この研究集会では、国際セッションでの発表参加をねらった中国や韓国の研究者をはじめ、日本国内から多くの研究者が集まります。このため、懇親会の場を利用し、広島の文化を参加者に紹介しようと考えました。調査の結果、広島県立加計高等学校・芸北分校の神楽部に神楽の上演を打診してみることにしました。加計高等学校から快諾の返事があり、広島の文化が伝えられる懇親会の実現に向けて、大変勇気づけられました。神楽の上演当日が高校の卒業式になってしまいましたが、神楽部員の皆さんは、卒業式終了後、マイクロバスに乗り駆けつけてくれました。本格的な衣装を着たすばらしい高校生による演技(八岐大蛇)は、玄人顔負けの演技でした。研究集会の参加者を初め、神楽部員にとっても、印象に残る1日であったと思います。この研究集会のローカルアレンジメントについては、知能情報システム工学科(現在、知能工学科)の田村慶一 先生、財務については、情報工学科の上土井陽子 先生から多大な支援が得られたこともあり、無事終えることができました。また、研究集会当日の運営に協力して頂いた本学の学生(情報工学系の博士3年生・中村朋健 君と知能情報科学系の博士1年生・高木 允 君、知能情報システム工学専攻の修士1年生・荒木康太郎 君と加藤智之 君、知能情報システム工学科の卒業研究生・澤田祐介 君)を初めとして、事務職員の皆さんには、大変感謝しています。なお、この研究集会に協力して頂いた5人の学生は、在学中、以下の論文を発表し、立派に社会に飛び立ちました。

・中村朋健:大規模高次元データに対するクラスタリングとクラスタリング結果の特徴抽出に関する研究,博士学位論文(広島市立大学),2007年3月
・高木:頻出パターンマイニングの高性能化とその応用に関する研究,博士学位論文(広島市立大学),2009年3月
・荒木康太郎ほか3名:ミスマッチクラスタに対する最小汎化パターン抽出方式,日本データベース学会論文誌,Vol.6, No.3, pp.5-8, 2007年12月
・加藤智之ほか4名:極小かつ非冗長な可変長ワイルドカード領域を持つ頻出パターンの抽出,電子情報通信学会論文誌D「データ工学特集号」,Vol.J90-D, No.2, pp.281-291,2007年2月
Yusuke Sawada et al.: Parallel Construction Method of a Disk-Based Suffix Tree on a PC Cluster, Proceedings of the 2008 International Conference on Parallel & Distributed Processing Techniques & Applications (PDPTA’08), Vol.II, pp.797-803, USA, July 2008.

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(4)今後の展開に向けて
データ工学研究室では、以上のような研究集会の誘致活動と同時に大学院生の国内外での研究発表の機会を増やしており、その成果はさまざまな箇所にでてきていると思います。例えば、現在までに、日本学生支援機構からの奨学金貸与者の中で、奨学金返還免除者として8名(3名が全学免除、5名が半額免除)が認定されています。また、日本学術振興会特別研究員として1名が採用されています。将来は、1,000~3,000人が参加するような規模の研究集会を本学あるいは広島市内に誘致できたらと考えております。関係の皆様のご協力をお願いするしだいです。

【ホームカミングデーについて】
同窓生の皆さん、学生時代に受講した講義科目を何件覚えていますか?例えば、私が現在までに担当した講義科目は、「情報科学概論(全学共通科目)」、「情報とコミュニケーション」、「集合論と基礎数理」、「離散数学」、「データ構造とアルゴリズムII」、「データ構造とアルゴリズムII演習」、「論理プログラミング」、「データベース」、「技術英語I」、「ソフトウェア工学」、「データマイニング」など多数あります。大学院については、大学院博士前期課程が開設された1998年度から「知識ベース特論」を担当しています。在学中に受講した講義科目を思い出しましたでしょうか? ついでに、同期生や学生生活で一緒に過ごした仲間の名前も思い出しましたか?
本学のホームカミングデー同窓会(懇親会)が2014年11月1日(土)に実施されます。広島市立大学同窓生の皆さん、退職された教職員の方々、現職の教職員の皆さん、再会をほんとうに楽しみにしています。なお、都合により参加できない同窓生につきましては、機会があれば、どうぞ遠慮なく本学に立ち寄ってください。いつでも歓迎を致します。